花明かりの夜に
「ふふふ。あれだけ大勢いれば噂が伝わるだろう。

瓦版にあることないこと書かれるだろうね。

沙耶も見たいだろうから一部もらえるように言っておこう」

「もう、紫焔さま!」


紫焔はあははと明るく笑うと、沙耶を馬上に押し上げた。

自分もひらりと馬に飛び乗る。


「さぁ、帰ろう」

「はい」


引かれる手綱に、歩き出す馬の蹄の音がここちよく体に伝わって。

それは心臓のように、生きている証のように正確に今を刻んでいく。


「そうだ、沙耶」

「はい」
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