花明かりの夜に
わぁっ


木の下でかたずを呑んで見守っていた女中たちが、歓声をあげて着物を追いかけるのが見える。


木の上に目を移すと。

目を大きく見開いて紫焔の方を見ている、くだんの女中と目が合った。

遠目にもわかる整った小さな白い顔に、くっきりと黒い大きな瞳。

強い風で頬にはりつく髪を片手で払いながら、幹に寄り添うように立っている。


「……見ない顔だな。

しかも、ずいぶんと――」


語尾は口の中に消えていく。


木上の女は、お役ごめんとばかりにぴょん、と下の枝に飛び移ると。

ひらりと枝にぶら下がっては次の枝にためらいなく飛び移っていく。
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