天然王子

しょっぱい飴玉

 

「ねー…」


ある日の授業中、私は問題が解けなくて隣の田熊の肩を叩いた。


「あ?」


田熊は眉間に皺を寄せてこっちを振り向いた。

もしかしたら寝起きかも


「え、どしたのさそんな険しい顔して」

「…字がなんも見えねーんだよ」


田熊は再び険しい顔をして黒板を見た。


「メガネ作れば?」

「つくりに行く暇がねぇ」

「じゃあコンタクト」

「毎回買ったら金かかる」


そういえば田熊ん家ってお姉さんと二人暮らしだっけ。

生活費稼ぐために色んなバイト掛け持ちしてるっぽいし…

田熊も色々と大変なんだなぁ…


「あ、じゃあ代わりに作って来てあげよーか?」

「いやそれ意味ねーし」


私の考えは一瞬で却下された。


「仕方ねーからバイト1日休んで作りに行くわ」


あ!!メガネで思い出したけど、そういえばどうしよう"これ"…

私は鞄の中から壊れたメガネを取り出した。


「あ?なんだよそれ」

「王子のメガネ…」

「は?」


弁償するの忘れてた…

王子はいいって言ってたけど…やっぱりこーゆーのはちゃんとしといた方がいいよね。


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