天然王子
 

メールに気をとられていると、急に目の前に影ができた。

見上げるとそこには…


「……牛肉がなんだって?」


相変わらず眠そうな王子が立っていた。


「え、どんな聴覚!!!?」


食べ物に関してここまで敏感に反応する人に、初めて出くわしました。


「牛肉…どこ……?」

「あぁ、えっと、お母さんからのメールの話…」


周りをキョロキョロ見渡している王子に向かってそう言うと、王子は眉を下げて残念そうに言った。


「……なんだ…ないのか…」


いやいやいやいや!!
普通学校に牛肉なんかある事なんて滅多にないからね!!!

しょんぼりしながら王子が自分の席に戻ろうとした…


「あ!」


私が思い出して叫ぶと、王子はこっちを振り返った。


「お弁当、いる?」


王子は目を輝かせて頷いた。

今日のお昼は牛丼なんだった

お弁当を牛丼にする母の手抜き加減にはさすがにビックリした。

案の定、お弁当箱からは牛丼の汁がもれていた…


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