幼馴染み~初恋物語~
宿泊施設へ向かうバスは1時間ほど走ると自然豊かな景色が見えてきた。

その自然の中に真っ白な建物が一つ建っている。和樹と櫻の泊まる施設だ。

窓側の席で景色を眺めていた櫻が、目を輝かせて和樹に話しかける


「和樹くんっ!!川があるよ~」


「川?えー、僕もみた~いっ」

すると和樹は櫻の席に近づき、小さな背を精一杯伸ばした。

しかしよく見えなさそうな和樹に櫻が席を譲ろうと、隣に少し移動する。

「じゃあ席を変わろっか?そうしたら和樹くんも見えるよね?」


櫻は必死に背を伸ばす和樹に、にこにこと笑みを浮かべ席の交換を提案する。


「え…いいの?櫻ちゃんが見えなくなっちゃうよ?」


「うん、いいよ。だって和樹くんにも見てもらいたいんだもん。」


和樹は席を変わるという提案をする櫻に驚いたような表情で本当にいいの?と聞く。

そんな和樹を見て、もちろんっと櫻は頷くと景色を和樹にも見せたいと笑った。


「ありがとうっ、櫻ちゃん」


笑う櫻を見て、満面の笑顔でお礼をいう和樹。

そして席を変わると和樹の瞳にもその景色が映し出された。


「うっわぁ…すごーい」


思わずそんな声が出てしまった。そんな和樹を隣に座る櫻はにこにこと嬉しそうに見ていた。

そんな会話をしていると施設の玄関前にバスが停車した。

二人はまた大きなリュックサックを背負うと仲良く手を繋ぎバスを降りる。


「和樹くんっ!!足に気をつけてね?」


「もー、わかってるよーっ」


バスに乗る時同様に和樹に話す櫻に笑いながら和樹は頷いて、他の園児たちと一緒に二人は施設のロビーまで仲良く手を繋いで歩いていく。


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