幼馴染み~初恋物語~
山の中にある宿泊施設に到着すると、すぐに川遊びが始まった。

川の上流で足首までしか深さのない細い川で、みんなが裸足になってはしゃいでいる。

ここでも和樹と櫻は二人で川の中に入っていた。


「和樹くん?見て~?小さな魚がいるよ?」


「ほんとだーっ!!めだかかな?」


和樹が両手で小さな魚を手で掬おうとするが、簡単には取れそうにない。


「がんばれっ!!あぁ…………残念…………」


「くっそーっ!!今度こそはっ!!えいっ!!」


ずっと隣で応援している櫻の期待に応えようと、何度も挑戦するが、素早い動きの魚は、和樹の小さな手では入らない。

その時、向こうから男の子の声が聞こえた。


「やった~っ!!魚が取れたよ~っ!!」


魚を取った少年は、柏木 真吾(かしわぎ しんご)

まだ有名でもなんでもないが、芸能界を目指すタレント養成所に入っている子役の卵。

運動神経抜群で、みんなの人気者。

真吾が魚を取ると、先生が用意したバケツに入れて、みんなで楽しそうに観賞していた。

それを見て櫻が和樹の手を引っ張って言う。


「ねぇ?和樹くんも見に行こうよ?」


「僕…………行かない…………」


櫻に喜んでもらいたかったのに、人が取った魚を見ても何も楽しくはない、

櫻の手を離した和樹は、一人で川へと向かった。



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