白の道化師
春
プロローグ
「お母様。今日は5人殺してきましたのです!どうでしょう?」
「あら、そうなの」
少女は無垢な笑顔を母親らしき女に向ける。
廃屋とされているはずの洋館の地下の牢屋でそんな会話がされていた。
誰が聞いても異常な会話だとわかる。そんな少女に母は慈愛溢れる聖母のような笑みを讃えながら言った。
「…たったの5人?ふふっ。ねえ静(せい)。お母さんがそれだけで満足すると思ったの?」
ナイフとペンチを両手に持ちながら女は笑った。少女はそんな母に抗議の声をあげることもなく、薄く笑った。
昨日より2人増やしたのですけどね。
そう頭の中で呟いて母を見上げる。その顔は狂気に染まっていた。
「今日も不合格、ですか。明日はもっと…もっと、もっともっともっともっともっともっともっともっと!!!!殺して、イイコになれるように頑張りますのですね」
そう言う娘に満足したのか女は頷き、笑って-----
「悪い子にはお仕置きしなきゃ、ね」
「はい」
少女の指を斬り落とした。
牢屋には少女の悲鳴だけが響いた。