君が居た頃。






…………一瞬、
息をすることさえ忘れていた。

歌が終わり演奏が止まっても、
あの水を掻くような
透き通る歌声が、
耳を、頭を、離れてくれない……。

加速する鼓動。

今までに、こんなにも人の歌声に
感動したことがあっただろうか。

「湊魅の声は人を魅力するの。
多くのメディアは
それを知らないけれど」

顔がいいことだけで売る。

そんなやり方ではなく
本気の歌を聴かせようと、
湊魅を売り出しているんだと
マネージャーさんは言った。

「あの歌もね、湊魅が
作ったのよ」


「……………ええ、
なんとなく………
そうじゃないかって思ってました」



"弱い僕"は今の湊魅、
"輝く僕"は未来の湊魅だ。

あの歌は、ひた向きな湊魅の
夢への姿勢だから。

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