君が居た頃。
「これさ、演技なんだよね」
…………………………………………はい?
訳が分からず呆然としていると、
次第に込み上げたように
湊魅がケタケタ笑い始めた。
「うそでしょ……マジ騙されるとか……!」
え、え?
ちょっと……………え?!
「今取り掛かってる映画の
1シーンなんだ。
重病に侵された主人公が
それを片想いの相手に告げるシーン」
…………だ、だまされた!
「そんな感動的なシーンを、
私をからかうのに使わないの!」
「だって面白いからー」
「もうっ怒るよー!」
潮風に遊ばれた湊魅の髪。
弾けるような無邪気な笑顔。
もう……私怒ってるのに……
こんなにドキドキさせるなんて
ずるいよ………………………。
「──それで?」
「え?何が?」
「その片想いの相手は、
なんて反応するの?」
その女の子は、湊魅の好きな人。
片想いの相手。
今はそれが私でしょ?
ただの役だけど、
湊魅が最初にそうしたんだ。
驚いた顔で顔をした湊魅は、
再び私をまっすぐに見詰めて言う
「"私がずっと側に居る"って笑って………」
「…で?」
「優しくキスするんだ」