君が居た頃。

見詰め合ったまま、
しばらく動けなかった。

「…………季織」

名前を呼ばれただけで
心臓が壊れてしまうほどに
ドキドキしてしまうから。

「……………演技、上手すぎじゃない?」

「そうかな?」

それは、半分本音だからだよ。

しばらく呆然としていた湊魅だけど、
みるみるうちに顔が赤くなる。

「………ま、まってこれ!やばい!
すっごい恥ずかしい!」

今更恥ずかしがって
あわてふためいている。

「…………とりあえず、服着たら?
冷えちゃうよ?」

「う、うん……」

よたよたと海から上がると、
真っ赤な顔のまま服を着て
砂浜にへたりと座り込む。

「湊魅ー沸騰しそうだよ?」

「~するかも……」


誰も居ない砂浜に、
肩を並べて座る。

まるで世界中にふたりきりみたいな、
そんな感覚。




…………ああ、
私いつからこんなに
湊魅を好きになっていたのかな……。


照れて真っ赤な顔。

無邪気な笑顔。

澄んだ声。

座るときの足の癖さえも、
全部がいとおしい。


ずっと側に居させて欲しい。


まだ出会って間もないのに、
すっかり湊魅に引き込まれてる。

大好きです。

いつか教えてあげる。


……だから今は二人、
このまま肩を並べて
幸せでいよう。
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