君が居た頃。

季織side



「季織!」


クラスメートが皆帰ったあとの
病室にやって来たのは、
湊魅だった。

「………湊魅?……なんで」

走ってきたのか、
湊魅は肩で息をしている。

「澤木……ああ、香織に聞いた……」

香織が?
ふーん。

はっきり言って
今は誰にも会いたくない。

目に映るものみんな、
蔑んで見える。

湊魅をそんな風には
見たくない。

それに、また言うんでしょ?
クラスの皆みたいに

「頑張れ」って


「季織、退屈してるでしょ?」

そう笑うと、
湊魅は突然鞄から
何かを取り出そうとする。


「季織にプレゼントなんだ」



何?



そんなもの要らない。

励まされたって
退屈を凌ぐプレゼントがあったって


病気は治らないじゃない。


鞄から私へのプレゼントを
取り出す湊魅の手を、
力強く制した。

その痛みにぎゅっと目を瞑った湊魅は、
すぐに何もないような顔をして
「どうしたの?」と笑う。

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