君が居た頃。


………………え?




「あの時、動けなかった俺を
季織は必死で助けてくれた」

まだ一週間もしないけれど、
もう昔のことの様に言う。

「だから……今度は
俺が季織を救いたいのに……
だけど……俺には
どうすることもできなくて……」


震える声は、
今にも涙声に変わりそうだった。


「だから、頑張ろう。
俺も一緒に頑張らせて欲しいんだ……」


一緒に…………………?


「確かに、季織の気持ちが
わかるわけない。
季織が伝えてくれなきゃ
わかんないんだ……。
だから、季織の感じたものを
その都度俺にも伝えてよ…」


抱き寄せられているから、
顔も表情も見えない。


< 33 / 85 >

この作品をシェア

pagetop