君が居た頃。
それにしても、今日は暑いなぁ。
家路につく道で、逃げ水をみた。
はやく家に帰ろうと、足早になった時。
「きゃっ!?」
何かが私の体にダイレクトに
体当たりした。
「い、痛……!誰………?」
暑さのせいか少し苛立ちを覚えて
振り返る。
…………なのに、
次の瞬間、彼の瞳に
吸い込まれてしまった。
「すみません……!」
まだ声変わりをしたばかりの
ハスキーな声。だけどどこか淡い。
これ以上ないってくらい美形の、
私より少し小さな男の子だった。
「だ、大丈夫です!」
なんだか緊張してしまう。
「よかった……。あ、あの本当に
すみませ…………っ」
すると、その男の子は、
突然噎せ返って
地面に膝から崩れてしまった。
「え、ちょっと……ど、どうしたの?!」
立ち上がれなくなってしまった彼は、
息をし過ぎてしまっている
みたいな感じで……。
過呼吸……?熱中症……?
とにかく何とかしなきゃ‼
「お、落ち着いて……!
自分の吐いた息を吸うの……!」
近くのベンチに彼を座らせると、
小さな知識で彼の口元に
自分のタオルをあて、
なれない手つきで背中を擦った。