君が居た頃。

「………………ふしぎ
…………楽に……なっちゃった」

すっかり落ち着いた彼が、
ふぅ、と息をついた。私も、ひと安心。

「本当にすみません…………
体当たりした上にこんな!
……迷惑かけちゃって……!」

申し訳なさからか、
さらに小さくなっちゃった彼は
私より年下らしく、なんだかかわいい。

「そんな申し訳なさそうにしないで。
私も起こしたことあるから、
その時先生がしてくれたみたいに
しただけだから」

私の言葉に、彼は少し驚いたように
私を見詰め返す。

「私……昔から丈夫な方じゃ
なかったから……。迷惑なんて
言わないで?私、いつも守られて
ばかりだから……誰かに必要とされて
嬉しかったんだから」


なんでかな、彼の前だと
私……なんでも言える。


「と、とりあえず……名前」

気を遣ったのか、
しんみりとした空気を破るように
彼が言い出した。

「あっ、ごめんね!澤木 季織です」

「いえ!結城 湊魅です!」

みなみ……か。
男の子なのに、変わってるなぁ。

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