君が居た頃。
小さな機械音がする。
多分それはこの部屋ではなくて 、
周囲の部屋の音。
目を閉じて何も見えなくなると、
代わりに色々聴こえるようになるんだな。
妙に納得しながら瞼を開く。
「湊……魅……………!」
白い部屋の中、
香織が俺の顔を心配そうに
覗きこんでいるのに気付く。
「香織………?
え………なんで俺…………」
「病院だよ。湊魅、
仕事中に倒れたって……
覚えてない?」
あ……………。
そうか、思い出した。
「すごい熱だから、
横になってた方がいいよ?
私、お姉ちゃんに伝えてくるから……」
「待って!」
思わず、その腕を強く引き戻した。
香織は驚いたように振り返る。
「季織は駄目だ。
これ以上は心配事増やせられない」
さっきまで震えていた声も、
もう普通になった。
だから大丈夫。
俺はまだ大丈夫。頑張れる。
今日はたまたま具合が悪かっただけ。