君が居た頃。
「季織さんは……」

「季織」

"さん"はなんだか遠いからイヤ。

「ええっ!?
えと………季織……は
高校生ですか?」

「そーだよ高3。湊魅は?」

「中2……です」

改めて年の差を感じたのか、
また小さくなってしまう湊魅。



「あ、やば!」




そして、何かを思い出したように
いきなり立ち上がる。

「俺……飲み物買うって……
練習抜けてきたんだった……!」

「練習?」

「あ……っ」

言うつもりのないことを口走ったのか、慌てて口元を手で覆う。

でも、見逃さないんだから。

「何の?」

「…………えっと……別に」

「ねぇ、何の?」

顔を寄せて覗き込んで追求すると、
真っ赤な顔をして「くっそ負けたぁ!」
と叫んで目を反らした。

「ー~俺、……歌やってるんです……!」

「歌?」

予想外の回答に、
思わず聞き返してしまう。

「だーかーらぁ!売れない歌手なの‼‼
悪かったなぁもう!
ほらっこんな近付いたって
見覚えないんだろ?!」

真っ赤な湊魅はヤケになったのか、
鼻先が触れんばかりに顔を近づけてきた。


…………っ!

…………こ、こんなに……
ドキドキしちゃうんだ……!?
私、さっき凄いことしてたみたい……‼‼

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