君が居た頃。
ビルとビルの隙間が真っ赤に染まり、
その間を夕陽が沈んでいく。
湊魅が病室を訪れてきたのは、
そんな赤い夕方。
「ごめん季織!
昨日お見舞いこれなくて……」
目の前で手を合わせる湊魅。
「い、いいよ
それより何かあったの?」
「仕事が長引いて……
気付いたらもう面会時間終わってた…」
そう言う湊魅の表情には、
疚しさなんて欠片も感じない。
それが嘘だなんて、
疑う由もない。
こんなんだから……
今まで気付かずに居たんだね。