君が居た頃。






それから先のことは、
よく覚えていない。

駆け込むように病室のドアを開いた。


目に飛び込んだのは、
真っ赤に染まったシーツと
色素の抜けた季織の顔。

まるで、
全身の血が抜けたみたいだった。


「いやぁぁ!!
お姉ちゃんー!!」


泣き崩れた香織の傍らに
目線を合わせてしゃがみこんだ。


「香織、大丈夫?」


心も、体も、
信じられないほど落ち着いていた。
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