君が居た頃。
「ママたちも世話が焼けるねー
4年も経ってやっと
片す決心つくなんてね」
呆れたように笑う香織。
全てを知った上で
4年間も誰にも言わずにいる香織は、
俺の何倍も辛かったんだろう。
あの日、俺に自殺のことを
言わないよう頼んだ口止めのメール
を受け取った香織は、
慌てて自殺を止めに入ったんだろう。
だけど間に合わなくて
そのことでの罪悪感に
押し潰されそうになって、
泣きじゃくってたのかな。
「…………ね、湊魅」
「ん?」
「湊魅は、本当に
お姉ちゃんが好きだった?」
香織は、言いにくそうに
俯きながらそう言った。
ぎこちない笑顔を浮かべている。
「…………なんで
そんなこと聞くんだ?」
「だって………お姉ちゃんが
死んじゃってから湊魅、
一回も泣いたりしないし」
「泣かないと、好きじゃないのか?」
「ちがうけど……でも
最初から何もなかったみたいに
普段通りなんだもん………」
最初から、何もなかったように。
本当にそうならどれだけ嬉しいことか。