白いジャージリターンズ~先生と私と空~


じゃあ、どうすればいいの?


私の居場所はどこにある?


どこで、吐き出せばいいの?




子育てが大変だってこと、そんなの当たり前。

我が子なんだから、ずっとそばにいるのが当たり前。


嫌い、なんてどの子も言うんでしょ。


空は、大好きなサッカーができなくて……

つらくて、苦しいんだもん。


受け止めてあげなきゃ。





「ママ、泣いてるの?」


「あ、ごめんね、空」


「空のせい?空がいい子じゃないから?」


「違うよ、ごめんね」


「うわぁぁあん」






私と空はふたりで泣いた。




この世界に、ふたりしかいないんじゃないかと思った。



なんだろう、この気持ち。




現実感がないっていうか、
感情がどこかへ行ったというか。




ふわふわして、夢の中のように、泣いた。









ピンポーン






玄関のチャイムが鳴っているけど、それもなんだか夢の中のようで、体が動かない。




何度も何度も鳴って、ようやく私は現実に戻る。



タオルで涙を拭きながら出ると、よく挨拶をする近所のおばさんが立っていた。





「新垣さん、大丈夫?泣き声が激しかったから心配で。お母さんも泣いてるの?」


「すいません……ちょっと疲れちゃって。うるさかったですね。気をつけます」


空は泣きつかれたのか、もう泣きやんでいた。



「いつも泣かないでしょ、新垣さんのお子さん。だから、何かあったのかなって思っただけ」


「ケガして、やりたいことできなくてストレスたまってるみたいなんです。すいません」


「何かあれば言ってね。本当に!」




こうして、心配してくれる人がいる。

ひとりじゃない。

そうだ。



ひとりなわけない。


私には先生がいる。

それなのに、何泣いてるんだろう。

大丈夫かな、私。


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