白いジャージリターンズ~先生と私と空~
誰か助けて。
誰か……
ゆかりは妊娠中で、こんなこと言えない。
お姉ちゃんは仕事だし、お母さんは遠いし……
先生は授業中……
「あ」
私は、すがるような想いで、高田コーチに電話をかけた。
『もしもし、空君のママですか』
その声を聞いて、安心して涙が出た。
「高田コーチ、すいません」
『どうしました?お母さん大丈夫ですか』
「はい、大丈夫です」
『いやいや、泣いてますよね』
「うぅぅぅぅ、うっぐ……助けてください」
やっと言えた。
誰にも言えなかった、その言葉。
助けて欲しかった。
救い出して欲しかった。
『ご主人の連絡先教えてください。今からそちらに行きます』
「そんな、悪いです……」
『空の様子も見たかったので、今日は会えればと思って昨日電話したんです』
私は、先生の番号と、自宅の住所を教えた。
近くなのですぐに行きますと言ってくれた。
先生には私が電話すればいいのに、今はそれすらできなくて。
ただ、誰かに来て欲しかった。
空とふたりきりでいるこの空間が怖くて怖くてたまらなかった。