白いジャージリターンズ~先生と私と空~
白い壁をただ見つめていた。
真っ白な壁に、クレヨンで落書きしたい気持ちになった。
今の私の心の中。
怖いよ、怖い。
どうなっちゃうの、私。
ダメな母親になっちゃう?
「空……空……」
涙が溢れてくる。
ーピンポーン
チャイムと共に、声が聞こえた。
「新垣さん、俺です。高田です!!」
涙をぬぐうけれど、どんどん溢れてくる。
玄関の鍵を開けた瞬間に、私は声を上げて泣いてしまった。
「大丈夫、大丈夫ですよ」
そう言って、私を抱えるようにしてリビングのソファへと連れていってくれた高田コーチ。
「ご主人には電話してあります。安心してください」
「コーチ……本当にごめんなさい」
「謝らないでください。電話くれて良かった。ほんとに……」
コーチの声が聞こえたのか、空が走ってくる音が聞こえた。
「コーチ!!」
顔を出した空は、いつものかわいい空だった。
コーチに駆け寄り、膝にのり、甘えている。
「空~、久しぶりじゃないか。サッカー来てくれないから、コーチが会いに来ちゃったよ」
こういう所も、先生と重なる部分だな。
高田コーチの存在が、私だけじゃなく、空にも支えになっている。
私は、不安感が消え、落ち着いてふたりを見ていた。