白いジャージリターンズ~先生と私と空~
「直、改めて…… これからも俺と生きていってくれる?」
目が合う。
「え?」
「二回目のプロポ―ズ。俺、もう一度ちゃんと直を幸せにしたいと思う」
「せんせ……」
「愛してるよ」
「私も愛してる」
しゃがみこんだ音楽室の床、この匂いも感触もあの頃と同じだった。
ここでキスをしたあの気持ち。
誰かに見られたらどうしようってドキドキしながら、ここでキスをした。
いろんなことがあった。
いろんな壁を乗り越えて、今がある。
「そろそろ、時間だな」
懐かしい壁の落書きを見て、
ベートーベンにさよならを言って、私たちは現実へと戻る。
手を繋いで走る。
誰にもバレずに、車に戻ることができた。
車を走らせると、どこかから声がした。
「あ、職員室見て」
「あ!!」
職員室の窓から数人の先生が手を振っていた。
ペコリと頭を下げると、みんなも下げてくれた。
最高の時間。
私の為に、たくさんの人が協力してくれた。
私の体調のことを知ってる先生たち。
ありがとう。
忘れない。
この時間。
先生に夢中だったあの頃に戻してくれた時間。
元気になるから。
笑顔いっぱいの直に戻るから。
元気になったら、笑顔でお礼を言いに来たい。
先生ありがと。
信号待ちの車の中、先生のほっぺにキスをした。
「お~、俺のスイッチ入れる気だろぉ?」
「ありがとね」
今日のこと、忘れない。
1日は24時間って決まってるけど、今日は中身が濃くて、いつもの1日と全然違う。
何にも縛られず、自分の気持ちを自由に過ごすことができた。
こうして、自分を取り戻す練習をして、空との向き合い方も変わっていけるといいな。