白いジャージリターンズ~先生と私と空~
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直からもらったもの【先生目線】
ー直からもらったものー 【先生目線】
夏休みの校舎は、少し寂しそうだった。
元気いっぱいの生徒がいない廊下は、とても静かだ。
隣の棟から聞こえる吹奏楽部の練習の音色が、毎年変わらなくて、
直との夏を思い出させてくれる。
体育教官室に行くと、俺の椅子に誰かが座っている。
「いつから教師になったんだぁ?」
「お、新垣!やっと来たか!」
ふざける茶色い髪を軽く叩くと、人懐っこい笑顔で、へへへと笑った。
今では陸上部のエースである中川嵐だった。
他の先生もその様子を見て笑っていた。
練習が始まる前に時々こうして俺に話しに来るようになった嵐。
陸上部の練習中は別人のように真面目なんだけど、こういう時はいつもこんな調子。
「昨日さ、あの子とちゃんと話してきたよ」
嵐を好きだというまだ中学生の女の子に無理やりキスをしてしまった、と悩んでいた嵐。
俺は、しつこく何度も何度も同じ話をした。
それはちゃんと届いていた。
「言いたいこと、言えたか?」
「うん。ずっと避けてたのは、俺の気持ちがわからなかったからどうしていいかわからなかったって。謝るの、遅くなってごめんってのと、いきなりキスなんかしてごめんって言った」
嵐は、当時俺に言った。
“キスしてみたかった”と。
好奇心で、するもんじゃない。
それは、直に出会って……
教えてもらったことでもある。
男が思う初めてのキスと、女の子が思うものは全然違うってこと。
夏休みの校舎は、少し寂しそうだった。
元気いっぱいの生徒がいない廊下は、とても静かだ。
隣の棟から聞こえる吹奏楽部の練習の音色が、毎年変わらなくて、
直との夏を思い出させてくれる。
体育教官室に行くと、俺の椅子に誰かが座っている。
「いつから教師になったんだぁ?」
「お、新垣!やっと来たか!」
ふざける茶色い髪を軽く叩くと、人懐っこい笑顔で、へへへと笑った。
今では陸上部のエースである中川嵐だった。
他の先生もその様子を見て笑っていた。
練習が始まる前に時々こうして俺に話しに来るようになった嵐。
陸上部の練習中は別人のように真面目なんだけど、こういう時はいつもこんな調子。
「昨日さ、あの子とちゃんと話してきたよ」
嵐を好きだというまだ中学生の女の子に無理やりキスをしてしまった、と悩んでいた嵐。
俺は、しつこく何度も何度も同じ話をした。
それはちゃんと届いていた。
「言いたいこと、言えたか?」
「うん。ずっと避けてたのは、俺の気持ちがわからなかったからどうしていいかわからなかったって。謝るの、遅くなってごめんってのと、いきなりキスなんかしてごめんって言った」
嵐は、当時俺に言った。
“キスしてみたかった”と。
好奇心で、するもんじゃない。
それは、直に出会って……
教えてもらったことでもある。
男が思う初めてのキスと、女の子が思うものは全然違うってこと。