白いジャージリターンズ~先生と私と空~
そんな会話をしているうちに、空が劇的なシュートを決めた。
習い始めて一番日が浅い空が、ドリブルからひとりで抜け出してシュートを決めてしまった。
「すごい!!空君!」
「才能あるね~」
「さすが、体育の先生のDNAだね」
泣いちゃうかと思った。
シュートを決めた後、必死で私を探していたんだ。
空、頑張ったね。
ママ、ちゃんと見てたよ。
一生忘れないよ。
空の初めての試合、初めてのシュート。
空、大好きだよ。
ミニ試合の後、高田コーチの周りに集まる子供たちを見ていると、みんなとてもいい顔をしていて、キラキラしていた。
種類は違うんだけど、“キュン”ってしたんだよね。
空に対してなのか、このキラキラした雰囲気になのかわからないけど、胸がキュンキュンした。
「男の子は、小さい恋人だからねぇ」
とママ友は言った。
「ですよね」
「異性のかわいさ、すごいよね」
「そうそう!だから、旦那がいらなくなるのよ」
衝撃的な発言を聞きながら、ほんの少しだけ共感している自分がいた。
先生への愛が減ったとかじゃないんだけど、空に対しての愛って本当に無償で。
先生への愛には、嫉妬や独占欲とかドロドロしたものがあるんだけど、空への愛にはそんなのがなくて。
清らかなんだよね。
「新垣さん、後でいいですか」
高田コーチに声をかけられ、私は荷物を片付けてからコーチの元へと向かう。
ひとりで着替えをしている空を横目にみつつ、コーチに声をかける。
「今日はありがとうございました」
「あ、すいません。時間大丈夫でしたか。空、ほんとのびのびサッカーしてますね」
空、と呼ばれることにドキっとしてしまう。
先生と私以外はみんな空君っていうもんね。
近くに立つと、思っていたよりも背が高い。
先生よりは低いかな~、って私いつも比べちゃうんだよね。
色黒なのは、サッカーで焼けているだけなのかな。