白いジャージリターンズ~先生と私と空~
自分で着替えている空を見ていると自然と涙が溢れてくる。
大きくなったなぁ。
「頑張ってほしいですけど、楽しんでほしいんです。だから、大丈夫だとは思いますがあまりうるさく言わないようにしてくださいね。好きって気持ちを伸ばしたいんで」
高田コーチはそう言って、ペコっと頭を下げた。
「はい!そうですよね。私、かわいいからこそいろいろうるさく言っちゃいそうで」
「そうですか?そんな風には見えませんよ。のびのび育ってて、愛情たっぷりで」
私とコーチの視線に気づいた空が、靴下を顔の前で振った。
あれは、こっちを見るなっていうサインだと思う。
「僕で良かったらいつでも相談乗りますんで、まぁ気楽に頑張りましょう!」
「はい!ありがとうございます。もう、わからないことだらけで」
「そうですよね。ママにとってサッカーなんて身近じゃないしね。育成コースの見学の件、また連絡します」
高田コーチは爽やかに子供たちの元へと走って行った。
先生がいてくれたらな。
先生は、空のゴールを見てどう思ったかな。
「ふたり、お似合いだったよぉ」
と冷やかすママ友の中には、空をうらやましがるような人もいた。
空にも、得意不得意があって、たまたまサッカーが合っていただけだと思う。
いくら親ばかだからって、空が何もかもできるなんて思ってない。
水泳、体操、お絵かき、歌、なんでもいいから、空が得意なことを伸ばしてほしい。
先生といつもそう話していたんだけど、空にはサッカーなのかもしれないね。