白いジャージリターンズ~先生と私と空~


その日の夜、帰ってきた先生に興奮しながら報告した。

ゴールシーンは嬉しくて、動画に撮ることも忘れてて。



「空、シュートどんな風に蹴ったんだ?」


「んとね、こうしてこっちからポンって蹴った」


空はそう言って、リビングに置いてあったおもちゃのボールを蹴って嬉しそうに笑った。



「そっか、そっか。パパも見たかったな。空の初めてのゴール」


「次も入れるから次は見てね」

とはしゃぐ空だったけど、次の試合の日も先生は多分無理なんだよね。


部活の顧問の方が今までよりも忙しくなった。

もうひとりの顧問の先生が、水泳部を兼任することになって、先生の負担が増えることになった。



「直、今日はごめんな。ひとりで寂しくなかった?」


「大丈夫だよ。実はね、空、才能あるみたいなんだぁ。終わってからコーチに呼ばれて、育成コースっていう本格的なクラスも考えてみないかって」



先生は空を背中にのせたまま、私の話を聞いていた。


「空のキックは強いからな。それに、走るのも速い」


「だよね~」


「コーチがあまりにも褒めてくれるから嬉しくて」



というと、先生は少し口をとがらせた。



「コーチ、イケメンとかだったら俺、すねるよ」


珍しくそんなことを言うので、かわいくて先生の頭と空の頭をグリグリした。



先生がそんなこと言うなんてね。


でも、イケメンじゃないとは言えない、よね。


「すっごいイケメンだよ」


というと、先生は私のほっぺをつねった。




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