白いジャージリターンズ~先生と私と空~
サッカーが終わるのをただじっと待っていた。
あんなに楽しかった空のサッカー教室がこんなにもつらいなんて。
主役は子供なのに……
子供たちが後片付けを始めて私はほっとした。
「空君のことでちょっといいですか?」
私の気持ちを知らない高田コーチがみんながいる前で声をかけてきた。
「はい」
「終わってから時間ありますか?」
私は小さく頷いて、カバンの中を整理するフリをしてカバンを開く。
みんなの視線が怖い。
「空君、もしかして育成コースに行くの?」
「えっ?」
動揺を隠せない。
「高田コーチから熱心にアプローチされてるからぁ~」
「え、そんなことないです。やる気があるなら考えてみたらどうかと言われてはいますけど」
目を合わせずにそう言うと、他のママさんの声が聞こえた。
「体育の先生の息子だもん。私達の息子とはレベルが違うよ」
「そうだよね。DNAが違うよね、ははは」
私はスマホを取り出し、画面に映る先生と空の顔を見つめた。
太陽の光が邪魔して、ふたりの顔がハッキリ見えないよ。
先生、こんな経験初めてだよ。
どうしたらいいんだろう。