白いジャージリターンズ~先生と私と空~
先生の秘密
―先生の秘密―
ベランダの窓からオレンジ色の夕日が差し込む。
この時間は何よりも宝物で、この時間をゆっくりと過ごせるととても心が満たされる。
大好きなあの体育教官室から校庭を眺める先生。
今もきっと毎日あのオレンジ色の空を見てる。
そして、思い出してくれている。
あの頃の寂しい目をした矢沢直を。
こうして、コーヒーを飲みながらオレンジ色に染まる白い部屋の壁を見ていると、
涙が溢れてくることがある。
奇跡だなって。
奇跡がいくつもいくつもあって、
こうして、先生と結ばれたんだなって。
時々こうして思い出すことで、今の日々のありがたさとか、幸せなんだなって再認識できる。
人間って駄目だなって思うのは、この幸せになれてきちゃって、
不満が出てきたりもする。
ゆかりや依子は、そんなの当たり前だよって言ってくれるけど。
贅沢になる自分がちょっと嫌だ。
子供にも恵まれて、あんなに素敵な旦那さんがいるのに。
休みの日に部活が入ったり、行事を優先しないといけない時とか……
空が生まれる前までは、それが当たり前だと思っていたのにね。
今は、寂しい気持ちになる。
いろんな職業があって、そんなことは誰にでもあることなのに。
先生の意識が、生徒に向かっている時も、感じるんだ。
あ、今生徒のことで必死だなって。
だから、空のこととか相談するのは明日にしようって思ったり。
でも、このオレンジ色の中にいると、あの頃に戻れる気がするんだ。
ただ、ただ大好きで
先生のことしか見えなかった3年間。
新垣先生だらけの高校生活だった。