白いジャージリターンズ~先生と私と空~
「空が生まれる前なら話してた。ごめん…… 話さないから余計に気になるよな」
「うん…… 気にしちゃダメだって思ったけど」
「正直言うとさ、気付いてるとは最初は思わなくて。でも、荒木に言われたんだ。直の愛はそんなんじゃないって」
「荒木さんが?」
「ああ、いくら子育てに忙しくても、先生の変化には絶対気付くって。それ言われて、俺も反省した。直は直なのに…… 空のことで悩みもあるのに、俺までごめん」
直は少し笑って、涙を拭いた。
無理したこの笑顔も、昔から何度も見てきたな。
「長谷川先生とは何もない。それは直もわかってると思うけど……」
「ゆかりにも言われた」
「相談してたのか。俺は、ダメだな」
コーヒーが冷めるよ、と直が言ったので、椅子に座った。
「長谷川先生は、家庭内でゴタゴタしているみたいで、その相談だった。旦那さんのことで、男の人の気持ちを知りたいってのもあって俺に相談したんだろうけど、俺は力にはなれないと伝えた」
「あんなに何でもできそうな人なのに、うまくいってないんだね」
「家庭も仕事も完璧って感じに俺も思ってたけど、実際は無理して無理して、限界にきてる。だから、突き離せなくて…… やましいことは何もないのに、直に言えば心配するだろうなと思った」
コーヒーを飲みながら、直は目を閉じた。
「話してくれたとしても、心配したと思う。私、ダメだな」
「いや、今回は隠した俺が悪い」
「長谷川先生の気持ちもわかる。先生って話しやすいもん。秘密も守ってくれるし」
直は、ワッフルを食べたあの夜からおかしいと感じていた、と話してくれた。
あの夜、話していれば、直を泣かせずにすんだのに。