白いジャージリターンズ~先生と私と空~
「空が来月から入ることはみんなに伝えてます。焦らずゆっくり治してくださいね」
高田コーチは、空と私のふたりを安心させるような口調でそう言った。
「ありがとうございます!練習見てて、びっくりしました。前のクラスとは全然違う……」
「月謝も違いますからね、ははは。本気でサッカー選手になりたい子ばっかりだから、教えるのも本気ですよ」
一番小さい子で2歳の子から、幼稚園の年長さんまでのクラス。
ここで、空はきっと楽しくサッカーができる。
「この後の、小学生のクラスなんて、もうレベルがすごいっすよ」
「へぇ、すごいですね。そのクラスに入れるように空も頑張らないと」
「大丈夫ですよ。楽しく、サッカーを続けてくれることが一番だからね。このクラスのお母さん達は、群れたりしてないですし、前よりは楽だと思うんですけど。でも……何かあれば絶対俺に話してください」
力強いコーチの言葉に、嬉しくなり、安心もできた。
「ありがとうございます。ほんとに、いろいろ助かります」
「じゃあ、空、5分だけ時間あるから、ヘディング練習するか」
「するする!!」
上半身を上手に動かすことができるようになった空は、コーチに抱きついた。
「空、コーチは友達じゃないんだから、ちゃんと話しなさい」
「あはは、まだいいんですよ。そのうち、厳しくしますから」
空の頭にポンと手を乗せた高田コーチに、空は早く早くと言った。
ボールを投げてもらって、ヘディングをする空は、ボールに触れられてとても嬉しそうだった。
骨折したことはもうどうしようもないんだから、先生やコーチが言うようにプラスに考えていこう。
空は、現実を受け入れて、しっかり治そうとしている。
3歳なのに、びっくりする。
「空、家でもやってるのか?うまいうまい」
「パパとやってるよ」
「そうかそうか。えらいなぁ」