残念御曹司の恋
事務室に他にだれも居ないことを確認してから、木下は少し妖艶に微笑んだ。
「女の趣味も怪しいわね。こんないい女が目の前に居るのに、一向になびかないんだから。」
デスクに座る俺の耳元に囁いた。
「また、振られたんだって?」
くすくすと笑いながら俺の顔をのぞき込む女は、当然のように俺の頭に手を置いた。
「明日休みでしょ?いつものバーで待っててあげる。」
「…行かない。」
「それでも、いいわ。どうせ今日は一人で飲みに行くから。」
ふふっと笑いを漏らすと、彼女は満足げに俺から離れた。
そして、最新の建具のカタログを本棚から抜き取ると、ちょうど呼びにきた後輩社員と一緒に打ち合わせへと向かう。
一人事務室に残された俺は、彼女が触れた頭に自分の手を置いて考える。
木下玲奈という女は不思議な奴だ。
俺に痛烈なダメ出しをしておきながら、冗談めいた物言いで俺に好意があるかのような発言をし、さらには俺が失恋したり仕事が原因で落ち込んだりしている時に決まって現れて、俺を酒に誘う。
俺に好意があるのか、それとも単に面白がってあるだけなのかは、分からない。
だけど、一番分からないのは。
そんな鼻持ちならない女の、意味不明な誘いに、毎回「行かない」と答えつつ乗ってしまう自分自身だった。
「女の趣味も怪しいわね。こんないい女が目の前に居るのに、一向になびかないんだから。」
デスクに座る俺の耳元に囁いた。
「また、振られたんだって?」
くすくすと笑いながら俺の顔をのぞき込む女は、当然のように俺の頭に手を置いた。
「明日休みでしょ?いつものバーで待っててあげる。」
「…行かない。」
「それでも、いいわ。どうせ今日は一人で飲みに行くから。」
ふふっと笑いを漏らすと、彼女は満足げに俺から離れた。
そして、最新の建具のカタログを本棚から抜き取ると、ちょうど呼びにきた後輩社員と一緒に打ち合わせへと向かう。
一人事務室に残された俺は、彼女が触れた頭に自分の手を置いて考える。
木下玲奈という女は不思議な奴だ。
俺に痛烈なダメ出しをしておきながら、冗談めいた物言いで俺に好意があるかのような発言をし、さらには俺が失恋したり仕事が原因で落ち込んだりしている時に決まって現れて、俺を酒に誘う。
俺に好意があるのか、それとも単に面白がってあるだけなのかは、分からない。
だけど、一番分からないのは。
そんな鼻持ちならない女の、意味不明な誘いに、毎回「行かない」と答えつつ乗ってしまう自分自身だった。