残念御曹司の恋
俺が失恋したというのは事実だ。
合コンで知り合って、半年くらい付き合っていた彼女と先週別れた。
性格が合わなかったことが原因だが、そもそも付き合い始めた理由が良くなかったのかもしれないと、今更ながらに思う。
一年前、ある女に振られた。
職場である住宅展示場に併設されている銀行のローン窓口に勤めていた片桐司紗は、明るくはきはきとした美人で、仕事の要領も良く、何より笑った顔が俺の好みだった。
はっきり言ってしまうと、俺には彼女を落とす自信があった。
恋愛面では、今まであまり苦労したことなどない。
顔もまあまあ悪くないと思うし、何より持ち前の押しの強さによって、だいたいはうまくいく場合がほとんどだ。
だから、こっぴどく振られた時には、落ち込んだというより、むしろ驚いた。
失恋のため、仕事も住む場所も変えたという彼女が選んだのは、新しい恋愛をすることではなくて、失った過去の恋を引きずって生きていくことだった。
そこまで深く相手を想って恋愛したことなどない俺には、衝撃的な話で。
彼女のことを『壊れている』とまで言った。
それでも、彼女のことを諦めるつもりは無かったのだが、結局はその男が彼女のことを連れ戻しに来たことで、完全に諦めざるを得なかった。
いつものように彼女に仕事の用件を伝えた帰り、入口ですれ違った男を見た途端に、嫌な予感がした。
場違いな高級スーツを纏い、彼女を見まっすぐに見つめる瞳。
なぜだか、俺はすぐに悟ってしまった。
この男が彼女の愛する男で、この男がここに何をしにきたのかを。
まるで、ドラマのワンシーンのようだった。
その数か月後、彼女は再び東京へ戻っていった。
彼女は結婚することだけを俺に告げたが、噂に聞いたところによると、相手はあの「クマザワ」の御曹司らしい。
どこまでも、俺の完敗だった。
合コンで知り合って、半年くらい付き合っていた彼女と先週別れた。
性格が合わなかったことが原因だが、そもそも付き合い始めた理由が良くなかったのかもしれないと、今更ながらに思う。
一年前、ある女に振られた。
職場である住宅展示場に併設されている銀行のローン窓口に勤めていた片桐司紗は、明るくはきはきとした美人で、仕事の要領も良く、何より笑った顔が俺の好みだった。
はっきり言ってしまうと、俺には彼女を落とす自信があった。
恋愛面では、今まであまり苦労したことなどない。
顔もまあまあ悪くないと思うし、何より持ち前の押しの強さによって、だいたいはうまくいく場合がほとんどだ。
だから、こっぴどく振られた時には、落ち込んだというより、むしろ驚いた。
失恋のため、仕事も住む場所も変えたという彼女が選んだのは、新しい恋愛をすることではなくて、失った過去の恋を引きずって生きていくことだった。
そこまで深く相手を想って恋愛したことなどない俺には、衝撃的な話で。
彼女のことを『壊れている』とまで言った。
それでも、彼女のことを諦めるつもりは無かったのだが、結局はその男が彼女のことを連れ戻しに来たことで、完全に諦めざるを得なかった。
いつものように彼女に仕事の用件を伝えた帰り、入口ですれ違った男を見た途端に、嫌な予感がした。
場違いな高級スーツを纏い、彼女を見まっすぐに見つめる瞳。
なぜだか、俺はすぐに悟ってしまった。
この男が彼女の愛する男で、この男がここに何をしにきたのかを。
まるで、ドラマのワンシーンのようだった。
その数か月後、彼女は再び東京へ戻っていった。
彼女は結婚することだけを俺に告げたが、噂に聞いたところによると、相手はあの「クマザワ」の御曹司らしい。
どこまでも、俺の完敗だった。