残念御曹司の恋
仕事は至って順調だった。
営業成績は、所長にわざわざ飲みに誘われて褒められるくらい好調で。

だけど、やっぱり人間苦手なものはいつまで経っても変わらないものなのか。
内装の打ち合わせ中、ほぼ決まりかけていたプランを前に、「せっかくならもう少し遊び心を出したい」と言われて、またかと思わず溜息が漏れそうになった。

時間がないので、インテリア事業部に至急で依頼を出しつつ、一応俺なりに遊び心というやつを考えてみる。

建具を変更したり、アクセントクロスを増やしてみてもいまいちパッとしなかった。
やはり、こればっかりは才能が必要なのか。

『つまらないわね。』

また、あの女に一蹴されることを想定しつつ、少しだけ別の担当者に当たることを期待した。


その願いが叶ったのか、いくつかのプランを持って、打ち合わせにやってきたのは、新人のコーディネーターだった。
緊張しながらも客の前で頑張って笑顔を作る彼女は、当然俺のプランを「つまらない」などと罵ったりしない。
あくまで、営業である俺を立てて、控えめに案を提示する姿は、誰かさんにも見習って欲しいくらいだ。

だが、彼女が持ってきたプランは、はっきり言って‘’つまらなかった‘’。
俺に気を遣っているのか、基本的に俺のプランを基に無難なアレンジを少しだけ施したようなもの。
センスのない俺から見ても納得出来るものでもなく、客の反応もいまいちだった。

結局、その日の打ち合わせでは決めきれず、もう一度プランを練り直して提案をする事になった。
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