残念御曹司の恋
恐る恐る部屋のドアを開けた彼女は、切羽詰まった顔の俺を見て、訳が分からないといった顔をしていた。

そんなことはお構いなしに、部屋へ入ると、その勢いのまま彼女を抱きしめた。

「えっ?ちょっ…どうしたの!?」

慌てて俺から逃れようとする彼女を逃さまいと腕に力を込めると同時に、言葉を落とした。

「何で、俺に黙ってんの?」
「へ?何が?」
「東京行くこと、聞いてないんだけど。」
「え、だって…」

問いつめても、まるで何のことか分からないと言う顔をする彼女が恨めしくて、一気に責め立てた。

「俺とお前の仲なんて、所詮そんなもんだよな。本当は俺のことなんて何とも思ってないんだろ。でも、俺は違う。お前居なくなったら、俺、どうすりゃいいの?誰が俺にだめ出しして、誰が俺の愚痴とか弱音とか聞くんだよ。」

完全に逆ギレもいいところだ。
木下はぽかんとしたまま、俺の最高に情けない表情を浮かべているであろう顔を見上げていた。

「え?いや、だって…」

木下が何か反論しようと口を開いた時、俺は反射的にキスで口を塞いでいた。

そんなつもりじゃなかった。
あんたのことなんて何とも思ってない。

そんなこと言われたら、一生立ち直れない。
だから、やや強引かもしれないが、正当防衛みたいなものだ。

「んっ…」

そのまま、言葉を飲み込んだ彼女の口に深く口付ける。
やがて、その貪り合うような激しいキスに二人とも夢中になっていった。
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