残念御曹司の恋
司紗と出会ったのは15の春。

六年一貫教育の私立の名門校。
司紗は数人しかいない高校からの編入生だった。
同じクラスになって、何回目かの席替えで席が隣になった。

最初に交わした会話を、今でも覚えている。

「熊澤君って、何が残念なの?」

当時から残念御曹司だと陰で呼ばれていた俺に、司紗は単刀直入に質問してきたのだ。

「え?それ、本人に聞く?」

「だってみんなに聞いても、見ればわかるとしか言わないんだもの。見ても全然わかんないから、本人に聞くのが、一番手っ取り早いかなあって。」

しばらく呆気に取られた後、俺は急におかしくなって吹き出した。

気になってたにしても、本人に聞くって大胆すぎるだろ!

クラスの大半は俺の素性を知っているためか、仲良くしていると言っても一定の距離を保っていた。
俺に、そんな失礼な質問をしてくる奴なんていない。

「笑ってないで教えてよ。だって、熊澤君、成績もトップだし、御曹司っていうの鼻にかけてもなくて、人当たりもいいし、ちっとも残念じゃないじゃない。」

面と向かって褒められると、少し照れくさくなった。
しかも、片桐司紗は気が強そうだけど可愛らしい顔をしていた。はっきり言って、俺の好みだ。
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