残念御曹司の恋
彼女に恋したまま、二年が過ぎた。
あれから急に打ち解けてすっかり仲良くなった俺と彼女だったが、関係は、ただのクラスメイトのまま。

友達として彼女と良好な関係を築いていた俺は、それを壊してまで先に進む勇気を持ち合わせてはいなかった。
第一、残念御曹司と呼ばれるくらいだ。
勉強ならともかく、恋愛において自信なんてまるでなかった。

だから、あの日も。
本当に俺は何の下心もなく、彼女と約束をしたんだ。




「ねえ、熊澤君は興味ないの?」

好きな子に、そう上目遣いに尋ねられて、平然と嘘が付ける男がいるはずがない。

「興味なくはない。」

「じゃあ、いいじゃん。しよ?」

いつもと違って、少し色っぽく笑う彼女。

「いや、よくないって。そういうのは、ちゃんと好きな人と…」

「真面目ね、熊澤君。」

「普通だ、普通。」

俺の部屋のベッドの上、迫ってくる彼女を必死に押し戻した。
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