残念御曹司の恋
夏休みも終盤に差し掛かった頃、司紗が参考書を借りるため俺の家を訪ねてきた。

どうやらサンダルで靴ずれを起こしたらしい彼女に、救急箱から絆創膏を取り出して渡そうとした時だった。
俺が間違って手にしたのは、何故か救急箱に常備されていた避妊具の箱で。

おそらく誰かが気を利かせて入れておいたのだと思うのだが、全くもってありがた迷惑だった。

しかし、気まずい空気になるかと思いきや、司紗はあっけらかんとして俺をベッドに誘った。

決して彼女がこういうことに慣れているわけではなくて。
単に受験勉強で溜まった鬱憤を、どこかで晴らしたいという気持ちからの行動なのだろう。

「勉強だけで、夏休みが終わっちゃうなんて、つまらないでしょ。」

「いや、受験生だから仕方ないだろ。」

彼女は狼狽える俺を面白がって、どんどん間合いを詰めてくる。

「18歳の夏は一度しかないよ。」

「おい、片桐。冗談はやめろって。」

はっきり言うと、とっくの昔に俺の体は立派に反応していた。
健康な男子ならこれは仕方ない。

「冗談じゃないよ。」

「これ以上はまずいって。…俺、初めてだし。」

「私も初めてだよ。」

「だったら、尚のことダメ…」

「熊澤君は、私じゃ嫌?興奮しない?」

「ばっ!…そう言う訳じゃなくて!お前こそ、俺となんて嫌だろ?」

「ううん、嫌じゃないよ。熊澤君となら、キスもそれ以上も。」

彼女は多少フザけていただけのつもりかもしれない。
でも、最後の一言が俺の理性を一つ残らず奪い去った。
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