残念御曹司の恋
「そう言えば、お姉さん元気?」

餃子をつまみながらビールを片手に、修司にさらりと聞かれた一言に、何と答えたらいいか戸惑った。

今も頭の片隅では、姉の事を考えていた。
いつも私の恋をうらやましがっていた姉は、家を出て遠くの街に行ってしまった。


「んー、元気と言えば元気。」

曖昧な回答をした私に、修司はそれ以上質問を重ねない。

「そっか。」

そう呟いて再び餃子を摘んだ彼は、笑いながら自然と話題を変えた。
笑顔で私としょうもない話をして、豪快に餃子を平らげる。
あっという間に、100個の餃子は二人の胃袋の中だ。

もちろん、姉が家を出てから私が落ち込んでいること、私がどんなに姉を恋しがっているかを知らないわけではない。
でも、彼は何が一番私の心をやさしく包み、癒すのかも知っている。
そして、それを絶妙なタイミングでくれるのだ。

よく食べて、よく喋り、よく笑う。
だから、私は彼のことが好きなのだと思う。


今日の修司も、楽しそうに笑う。
それが、純粋に楽しいのか、それとも私に向けられた優しさなのか、どちらかは分からない。

そのどちらにせよ。
彼にはいつも笑っていてほしい。
そして、それを隣で見ているのが、いつまでも私であればいいのになと思う。
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