残念御曹司の恋
「こんなところで、何してる?」

私の腕を強く掴んだまままま、私に問いかける修司の顔は、見たこともないくらい強張っていた。

「えーっと、簡単には説明できないんだけど…」
「ちゃんと、説明して?」

私の言葉を遮って、修司が再び問い詰める。
何から説明しようかと頭をフル回転させているうちに、修司がまた口を開いた。

「まず、この人は?」

修司の視線の先にいたのは、もちろん熊澤さんで。視線が次第に彼が持つ紙袋に移ると、わかりやすく眉間に皺が寄った。

まずい、完全に勘違いしてる!

「この人は…」
慌てて説明しようにも、言葉が続かなかった。
お姉ちゃんの恋人…ではないし。
単なる知り合い?
いや、逆に怪しいし。
かと言って、こんな銀座のど真ん中で堂々と本当のこと(姉の元セフレ)を言うわけにもいかない。

私がいろいろと考えを巡らせている間に、口を開いたのは熊澤さんだった。

「はじめまして。熊澤と言います。先ほどまで、紫里さんに指輪を一緒に選んでもらっていました。」

にこやかに挨拶する熊澤さんの言葉に、修司の眉間の皺が一層深くなる。

「は?指輪?どういうつもりだよ。」

熊澤さんに詰め寄る修司を、慌てて止めに入る。

「修司、ちょっと待って!誤解だから。」
「離せよ!紫里は俺の…」
「だから、落ち着いて!その指輪は…」

私の方を振り向いた修司に、至近距離から大声で訴えかけた。

「私のじゃなくて、お姉ちゃんのなの!」
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