残念御曹司の恋
この男に抱かれるようになったのは、10年前。
18歳の時だった。
当時、クラスメイトだったこの男とこんな関係になったきっかけは些細なことで。
あのとき、まさか十年もこの関係が続くとはお互いに思って居なかっただろう。
この十年で、二人の生活は色々と変わった。
互いに大学生になり、社会人になり、生活の基盤も人間関係も目まぐるしく変化した。
背負わされた責任と同時に、自由に使えるお金も増えた。
当然、ただの銀行員である私より、この男の身に起きた変化の方が遥かに大きいだろう。
でも、どんなに生活は変化しようとも、二人の関係は変わらなかった。
ふたりの関係が恋人同士だったならば、こんなに時が流れる前に、おそらく別れか結婚か、どちらかの岸に流れ着いたのかもしれない。
だけど、この男と私は、この曖昧に繋がる関係のまま、延々と大海原を漂流している。