残念御曹司の恋
「おかえりって言ってくれないの?」

リビングダイニングに向かいながら、彼女に尋ねる。

「ここは、竣の家じゃないもの。」

彼女はツレない回答だ。
それでもキッチンから俺の好物のビーフシチューの匂いがして、俺はすぐに機嫌を直した。

「早かったね。」

スーツの上着を掛けながら司紗が言う。

「ああ、羽田行きの便に空きが出たから、変更した。新幹線乗っても、そっちの方が早く着くから。」

「羽田に降りたなら…」

「家に帰れって?司紗は、俺に会いたくなかった?」

「いや、せめて荷物置いてきたらよかったのに。」

部屋の片隅に置かれた、大きなスーツケースを司紗が見る。

「あれには、おみやげと、ここでの着替えも入ってるから。」

そんなのは、言い訳だ。

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