残念御曹司の恋
「例の本、来週発売なんだろ?」
もうすぐ式場のホテルに到着するかというところで、修司が再び私に問いかける。
「うん。もう刷り終わって、手元にあるよ。」
私は後部座席に置いた鞄の中から一冊の文庫本を取り出す。
「今日、お姉ちゃんに一冊プレゼントしようと思って持ってきました~!」
「内緒にしたまま、よく発売に漕ぎ着けたな。」
「うん、今回のは片霧紫苑、初の書き下ろし単行本だからね。サイトにも掲載されないし、そもそも、このところお姉ちゃん忙しくて私のこと気にしてるどころじゃなかったから。」
私はにやりと笑いながら手元の文庫本を見る。
ラブリーなピンクを基調とした表紙。
ウエディングドレスに身を包むヒロインが描かれている。
「お義兄さんは、もう読んでるんだっけ?」
「うん。一応内容チェックがてらね。お義兄さんにはいろいろ協力してもらえて助かったよ。本物の御曹司の実態についても、取材してみたかったから。」
「よく、書いてもいいってOKもらえたな。」
「まあ、フィクションだし。いろいろ脚色もしたし。モデルがいるとも言ってないし。」
「俺だったら、絶対断るわ。」
「その前に、私たちの話は平凡過ぎて小説にしてもおもしろくも何ともないからね。」
そう言い合って、窓の外を見てみれば、都心に立つ豪華なホテルが目に入る。
いつか、姉とスイーツブュッフェにやってきた、あのホテルだ。
あの日見た姉の不自然な笑顔を思い出す。もうあの苦しそうな顔は見たくない。
もうすぐ式場のホテルに到着するかというところで、修司が再び私に問いかける。
「うん。もう刷り終わって、手元にあるよ。」
私は後部座席に置いた鞄の中から一冊の文庫本を取り出す。
「今日、お姉ちゃんに一冊プレゼントしようと思って持ってきました~!」
「内緒にしたまま、よく発売に漕ぎ着けたな。」
「うん、今回のは片霧紫苑、初の書き下ろし単行本だからね。サイトにも掲載されないし、そもそも、このところお姉ちゃん忙しくて私のこと気にしてるどころじゃなかったから。」
私はにやりと笑いながら手元の文庫本を見る。
ラブリーなピンクを基調とした表紙。
ウエディングドレスに身を包むヒロインが描かれている。
「お義兄さんは、もう読んでるんだっけ?」
「うん。一応内容チェックがてらね。お義兄さんにはいろいろ協力してもらえて助かったよ。本物の御曹司の実態についても、取材してみたかったから。」
「よく、書いてもいいってOKもらえたな。」
「まあ、フィクションだし。いろいろ脚色もしたし。モデルがいるとも言ってないし。」
「俺だったら、絶対断るわ。」
「その前に、私たちの話は平凡過ぎて小説にしてもおもしろくも何ともないからね。」
そう言い合って、窓の外を見てみれば、都心に立つ豪華なホテルが目に入る。
いつか、姉とスイーツブュッフェにやってきた、あのホテルだ。
あの日見た姉の不自然な笑顔を思い出す。もうあの苦しそうな顔は見たくない。