残念御曹司の恋
初めて彼に会ったのは、私が14歳の時だった。
その頃の私はまだまだ子供で、まるで分かっていなかった。
この気持ちが単なる憧れなのか、それとも本気の恋なのか。
ただ、そのどちらであったにせよ、私にはどうでもいいことだった。
私は、年頃になれば父や母みたいに、親が決めた相手と結婚する。
それは、きっと変えようのない現実で、私に課せられた義務だ。
何不自由なく育ち、周りは何もしなくても私を持て囃してくれる。
働かなくても生きていけるし、望めば贅沢だって出来る。
きっと自分は幸せなのだろう。
だから、その代償は甘んじて受けなくてはならない。
いつからか、私はそう思うようになっていた。
そうさせたのは、父と母。
そして、私の好意に対して10年間見て見ぬ振りをしてきた、あの人だ。