彼があたしを抱くとき

海は一面、霧につつまれ、波頭の姿もみえない。

軽い綿のつまった頭では、車がヘッドライトを照らして近づいてくるのを、よけることしか考えていない。

機械的に足が動き、黙々と歩く岸谷のあとをついていく。あたしもまた、黙々と歩いた。


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