彼があたしを抱くとき

二匹目が逃げ出してきた。

小さな赤い蛇が、水晶のような目で、静かに見つめている。

スカートの下にそっと指を忍びこませてみる。

赤茶色の血が指先で、生臭いにおいを発していた。

バスの外の闇は、いっそう深くなったようだ。

青白い光が車内を満たしている。

このまま、永久にこのバスは、走りつづけてはくれないものだろうか。

あたしと岸谷の二人をのせて。

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