彼があたしを抱くとき
あれは、おそらく父の四十九日の出来事なのだろう。
父と母が築き上げた財産が、
なんのことわりもなく、
祖母の甥が養子になったため
トビに油揚がさらわれるように、
母から取り上げられた。
その詳しい事情はあたしは知らない。
が、後妻であった祖母が、
家族との血のつながりがない不安からか、
ヒステリックに、
母とその子であるあたしをいじめたのは、よく覚えている。
そのためか、あたしには年老いているものへの好感はない。