彼があたしを抱くとき
母が結婚に対して唯一しめすことのできる優越が子供だけなのは、よくわかっている。
事実、あたしが県立へ入学した同じ年、養子に入った甥の子供たちは、
一人は中学での成績の悪さを苦に家によりつかず、
上の一人は県立への志願をあきらめ受験した私立高校にも、失敗している。
あたしはひどく上機嫌だった。
母は顔にこそ出さぬが、あたし以上に満足していたのは明らかだった。
なんのことはない、あたしと母は仲がいいのだ。