彼があたしを抱くとき

岸谷の選択で甘美な思い出の材料にするか否かは決まる。

それに、少量の期待もあった。

岸谷の態度が和らいでくれたら、ということや、
すくなくとも彼の記憶にあたしが鮮明に残るだろうという期待。

あたしは自分の自尊心が傷つけられることを極度に恐れた。

それに慣れていないのだ。

だから、岸谷に単純で軽薄な女の子とみなされたくない。


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