泣いて、笑って強くなれ
プロローグ
夏のちょうどお昼頃だっただろうか。
ミンミンと蝉がうるさく鳴いていた時だった。
「これから二人はどんどん大きくなって、色々な人に出会うと思う。
そんで、たーくさんの経験をすると思う。
だけど、これだけは忘れないでほしい。
”人間、泣けるということは、笑えるという証だからね”」
だれかが、そう私にいった。
一体だれなのか。
その記憶はとても曖昧で。
思い出そうとすると、何故か白いもやののようなものがかかって、肝心なところがどうしても見えない。
そしてその人は続けて、確かにこういったんだ。
「大人になれば、その意味がきっとわかるよ」
『泣いて、笑って強くなれ』
< 1 / 115 >